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『嘘の戦争』感想【ネタバレ】

先日嘘の戦争を見終わりました~♬♬

前作の銭の戦争が良かったので元々期待値が高めだったんですが、それを見事に超えてきてすっげ~面白かった。今まで見た草なぎ主演ドラマの中で一番面白かった。何より草なぎがかっこよくて……髪型も服装もイケてて……ありがとう。

 

主役の一ノ瀬浩一(本名:千葉陽一) は幼少期に目の前で一家を惨殺され、かろうじて生き残って必死に事実を訴えるも聞き入れられなかったことで心身ともに深い傷を負い、タイで詐欺師として新たな人生を送る男。ある日自分を殺そうとした犯人と偶然出会ったことをきっかけに日本に帰国して復讐を始めるというストーリー。

 

前半は経営コンサルとして主犯格の仁科興三一家に接近し内部に入り込んで事件関係者を徹底的に抹殺していくスリリングな展開。鮮やかな詐欺の手口と、最初から浩一に不信感を抱いてる仁科家次男・隆との駆け引き、興三の愛娘・楓とのラブストーリー(結婚詐欺)がメイン。相棒ハルカ、弟分カズキとの見事な連携もテンポ良くて見応えがある。

後半部は詐欺です!!復讐しにやってきました!!!ってバラしちゃって浩一と興三がひたすら大暴れ。詐欺グループ内の造反もあったり、六車というヤクザ傭兵みたいな男が出てきて熊用の罠に引っかかってたりわちゃっとしてた。

 

草なぎは目頭がビッ!と切れてて、線がシャープで、翳があって、独特の飄々とした雰囲気が暗い過去を持つ野心あふれるアウトロー設定にすごく合ってた。わたしは胡散臭くていやらしいかわいそうな男が好きなのでこういう役柄を演じてくれてすごくうれしいです。ありがとうね……。

タイでのいかにも怪しげなエスニックファッション、病院に忍び込む時のインテリ細メガネスーツ姿なんかは最高。特に細メガネは結構な頻度で掛けてくれて本当に本当に感謝。つよしは鼻梁がシュッと細くて高くて目が切れ長だからメガネが似合うね~~

 

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SEXY。

 

3話で復讐相手の刑事が浩一にハメられたと悟るシーンでの浩一の表情はすごく印象的だった。自分の思惑通りに復讐が成功したんだけど、表層的な喜びはなくて相手をじっと見つめて静かに涙を流すのが本当に綺麗だった。復讐してもしてもやり切れない情念や苦しんできた年月の長さを、あの短いワンカットから感じさせられましたね。その刑事が自分は騙されてると理解した上で、彼自身の意思で冤罪を受け入れる展開も良かったな~でも三瓶のことは今までお世話になったからって合成スキャンダル写真ばらまかなかったけど、刑事もわりかしいい人だったのに容赦なくハメたのひで~よな笑 そこの浩一自身の矛盾は復讐を進めていく内に心境が変化したということかなと思いました。

 

あと、五十嵐が無敵の人状態になって興三を刺殺しようとするまで追い込んで、かつ自分の三文芝居の演出として使ったのは卑劣すぎてすげーアガった。この容赦のなさが魅力ですね。しかし千葉家殺害でプロフェッショナルの六車を使っときながらわざわざド素人の五十嵐を随行させてたのは謎。絶対に同じ金でプロの殺し屋雇った方がいいじゃん!?案の定浩一を殺し損ねてるし…と思った。医者を飼っとくと何かと便利だから秘密を共有して仁科家に絶対服従させるため?

 

そして、嘘の戦争最大の魅力といえばやはり仁科晃

 

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↑ヨイショしてくれる年下エリート男性を引き連れてえらそげな晃

 

仁科晃、声がデカくてデリカシーと学習能力の一切が欠落したボンボンおじさん。かわいそうでかわいい男(バカだけどバカにされてることは分かってるのがミソ)♡

晃は世間知らずでお調子者だから今まで色んな人に騙されて仁科家に損失をもたらして、そんな自分がどうしようもなく恥ずかしいからいつも挽回しようとするんだけど骨の髄までバカなので同じ失敗を何度も何度も繰り返してまた家族を失望させて…の無限ループで本当にこっちが泣きたくなる。虚栄心の強い拗らせアホ男好きだ~~………。そういう劣等感につけ込んできた浩一を心の底から信頼して、ちょっと浩一も心を許しかけるんだけど結局手ひどく裏切られるという悲惨な結末を迎える。

所々で晃ってバカじゃなければ、出会い方が違えば、浩一の良い友達になれたかもしれないよねって思わせられてまた泣く。浩一に俺たちで野球チーム作ろーよ♫って話してる時の表情とか本当に楽しそうで……晃、騙されてるとは言えこういう幸せな会話することができてよかったね……泣 あとなぜか妹・楓と浩一のデートに付いて来て(最悪…)、マブダチ浩一がかわいい妹のこと好きって言ってくれて何重にも嬉しくなっちゃってすげーニコニコしてて、もうめちゃくちゃバカで…良い彩りでした。アホだけど面倒見のいいガキ大将タイプの兄ちゃんと頭良くて美人なのに奥手な感じの妹の関係性かわいかった~

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かわいっ………。

なんか…悪い奴じゃないかもしんない/////と思い始めた直後、晃がOL殺人事件の遠因作ってたと発覚して一気に突き落とされる。興三、他人の事件隠蔽のために一家惨殺ってアフターケア充実しすぎでは?って疑問だったけど、結局は仁科家の威信にかかわる問題だったから殺人まで犯していたと分かっていやにすっきりしちゃった。やっぱりアホは罪なんだなっ…て強く実感させられる。(………。) 残酷すぎるだろ!!泣

一番心臓がキューーーッ!!!となったのは社長解任通知の時。弟だけでなくよき右腕であり友人でありかわいい義弟(予定)だった浩一にも捨てられて、雨が降りしきる中膝から崩れ落ちて「君にまで見捨てられたら…1人でどうしたらいいんだよ〜泣」って…も、も~やめたげてよ~おじさん泣いてるよ~かわいそうだよ~~泣って号泣した。シリーズ通して拗らせた男を徹底的にみじめに晒すの好きだね……そういうのすごくいいと思います。でも今までよりとどめの刺し方が弱くて、地獄に落ちろ♡とは言ってたけど浩一もちょっとは晃に愛着湧いてたんかなと思った。愛いやつめ……。

そして社長解任以来、物理的にも精神的にも拠り所を失って「俺がなんとかしなくちゃ…俺がやらなくちゃ…」っていつぞやの五十嵐みたいにやばい精神状態になってフラフラ徘徊してた不審者・晃、突然現れたかと思えば浩一を刺す!ヴォケーーーーー!?お前のこと好きって言ったの嘘です。嘘です。って絶叫した。

けど実は浩一の頼みで刺殺したように見せかけただけで、浩一は逃亡する時間的猶予を得て晃は殺人の罪を被ることで一時的にしろ贖罪の気持ちを満たして一石二鳥♫みたいな策略で……。浩一刺殺自体は虚偽でも晃は過去に千葉家殺害の遠因を作ったわけだし、すごくうまいやり口だな~と感心しちゃった。興三の誕生パーティーといい刺され芸好きだな浩一~!周到で陰湿な心理戦とは対照的にフィジカルへの過信がかわいい。楓との出会いもわざわざガチで事故ってたもんな…

 

次男・隆はというと最後までひとりず~っと浩一を疑ってて目の上のたんこぶだったんだけど、会社とともに先代の罪をも引き継ぐ覚悟のある漢気あふれる男で…いいですね。常に冷静沈着で浩一とは別種の食えない男なんだけど、唯一オーストラリアの伝承の覚え間違いで浩一=千葉陽一を確信するところでニヤーーー!!!と激ニヤリ顔見せてくるのがかわいかった。最後タイに出国する浩一との別れ際、好敵手としての独特の距離感が表れててよかったな~互いに「コイツ嫌だな…でも頭切れてクソむかつくな…」っていう苦手意識がにじみ出てて萌え。晃といい良い兄弟だね……。

 

作中で一番アツかったのは謝罪会見のシーン。ついに千葉家殺人事件についての謝罪会見を開かせることに成功したたかと思いきや仁科興三の大立ち回り、隠蔽・殺人事件には一切触れず代わりに粉飾決算の謝罪(会社ではなく興三個人へ批判が向くように先回りしたリスク回避)と詐欺の告発(批判の矛先をずらす)、ついでに新プロジェクトも発表しちゃお♡ってクソ狸すぎてうおおおお!!?って燃えた。あのシーンは市村正親の貫禄があってこそだな~心臓病で倒れた時の白目ヒン剥いたところも怨念こもってて凄かったけど、このどんでん返しは圧巻だった。

 

9話の警察が浩一を追ってることを利用して六車逮捕まで誘導するところもアツい。詐欺仲間の百田とカズキが一旦寝返ったけどまた都合よく協力してくる展開が良くって…特に百田はバー経営してインコ飼ってるのが似合う見事な胡散臭さで詐欺師という役柄ぴったりだった。

 

しかし自分の娘が爆殺されてようやく自分の罪の重さ、浩一の味わった苦痛を知る興三、何???最愛の娘を人質に取られすべての罪をネット配信されて既にどん詰まりなのに、最後に謝罪を迫る浩一に暴言吐いてたの意味が分からなかった。興三って冷徹な経営者タイプだけど別にアホでもサイコパスでもなかったのに、言動が衝動的すぎるし人の感情理解するの遅すぎる。そこは既に第一線を退いた者の老いや愚かさの表れなんでしょうか。

 

この作品は嘘がテーマになってるけど、嘘つかれて騙された~ぴ~ん泣とかじゃなくて「本当のことを言ったら嘘つき呼ばわりされて、嘘をつかされた」のが浩一にとって一番耐えがたいことだったってのが新鮮だった。家族を奪われたことの悲しみや憎しみというより、罪を着せられた父親と嘘つき呼ばわりされた自分の名誉の回復と、犯人に事実を証言させて「何が本当で何が偽りなのか」をはっきりさせたいという秩序意識や誠実さが一番の動機だったんじゃないかな~と感じた。

最後ら辺で楓が浩一に「あなたは嘘ついた自分が許せなかったけど、嘘つかなきゃ殺されてた。嘘があなたを救った、あの時嘘をついたのは正しかった」って伝えたのが作品全体のメッセージとしてすごく良かった。嘘をついた過去を許容することが千葉家殺害に関して沈黙を貫き続けることにした仁科家をも肯定してると思うと疑問が残るけど、復讐をする中で刑事や三瓶のような善人であっても一生涯清廉潔白を貫くことがどんなに難しいかや、隆のような加害者家族の覚悟を知って、浩一自身も詐欺師という身だし「嘘」を抱え続けて生きる道っていうのもアリなんじゃないかって思えたんですかね。嘘の戦争はトラウマ的にも生業的にも「嘘」をアイデンティティの一部とした浩一が自分自身を受容していく物語だったと考えると、断罪的な結末にならなくて良かったな~と思います。

 

何はともあれ、嘘の戦争&草なぎの細メガネ&仁科晃、Love forever……✞

ありがとうございました。